保険と自費の違い①

歯科医院において保険治療と自費治療の違いはなんだかご存じですか?

ネットで調べると、ほとんどのサイトで保険治療だと、最低限の治療だとか、歯が持たないだとか、材料が限られてるとか、虫歯になりやすいとか、保険治療の悪口がたくさんでてきますね。

はたしてそうなのでしょうか?

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そういう考えにも一理あると思いますが、個人的にはすごく嫌です。

確かに、保険治療の場合、保険治療で認められている材料、認められていない材料があるため、カリソルブであったり、ドックベストセメントであったりを使用することは出来ませんし、MTAセメントについてもごく一部の場合を除いては使用できません。
金合金やセラミックでかぶせものを作ることは出来ませんし、金属の入れ歯やノンクラスプデンチャーを作ることも出来ませんし、インプラントを埋入することも出来ません。

虫歯の治療であれば、コンポジットレジンというプラスチックか、金銀パラジウム合金という金属で詰める。入れ歯であれば、歯の部分はプラスチックと陶材、歯ぐきの部分はプラスチック、ばねの部分に指定された金属を使ったものでしか治療は出来ません。

もし保険治療として認められている以外の方法で治療を希望される場合は、自費治療になります。

・・・が、保険治療は精度が悪いから虫歯になるとか書かれているのはどうかと思います。
厚生省から保険治療として指定があるのは治療方法、材料、金額についてであって精度についてはいい加減でいいとかいう指定はもちろんありません。

材料や手段は制限されていますが、保険だからこの程度とか、安かろう悪かろうと医療を提供する側が妥協していていいのか?と思います。

  

一例を挙げますと、例えばこの歯
左側のかぶせものの状態もよくないですが、こちらの右側のプラスチックの詰め物
本来の歯の形を戻すとしたら、この赤く塗った部分ははみ出している部分です。

こういう部分があると、その歯との段差の周囲に汚れがたまり歯茎が腫れやすくなりますし、虫歯になりやすい状態となります。(この歯は実際に境目から虫歯になっています。)

この件に関して言うと、保険だからこうなっているというわけではなく、プラスチックの材料をきれいに詰めなかったという前医のただの怠慢だと思います。

また、実際の写真等提示できないですが、今回の記事を書かせていただくにあたり参考にさせていただいたサイトの中には、プラスチックがつぎはぎになってるから全部セラミックに変えて数十万とか写真付きで書かれているサイトもありました。
確かにきれいな歯になってはいましたが、セラミックにする場合は歯を大きく削って(場合によっては神経を取って)治療しなければなりません。
永久歯は一度生えると死ぬまで生え変わることはないので、減ることはあっても増えることはありません。同じ歯の治療はそう何回も出来ません。
減った部分については現在の歯科治療では代わりのもので詰めることしかできないので、見た目のために削ることはあまりお勧めできないと思います。

芸能人の中で、歯を白くするため・歯並びを整えるために全部セラミックでかぶせている方をテレビで時々見ますが、数十年後その歯はどうなっているか考えると・・・。




当院における保険と自費の違いは、使える材料と治療方法に制限がなくなるということです。

例えばかぶせものの話として、セラミックにすると長持ちするという話もありますが、そもそも口腔内の管理ができていない状態でセラミックを入れた場合は長持ちしないですし、きっちり管理ができているのならば保険で作ってもしっかりとしたものは作れると考えています。

素材的な問題として、プラスチックの場合は経年劣化で変色してきたり、強度の問題がありますし、表面性状として汚れが付きやすいという問題がありますので、口の中に付けた時と数年後を比較すると見た目は劣化します。

将来のことを考えると、どっちがいいか?というと、間違いなくプラスチックのかぶせものとセラミックのかぶせものの話であればセラミックのほうがいいと思っています。

ただその大前提として、歯の状態がそもそも悪かったり、ご自身のお口の管理ができておらず、セラミックをいれたとしても長持ちすると思えない場合は自費治療はお勧めしておりません。

歯の状態等は個人個人変わりますので、私のこの歯は?という方はまたご相談ください。

(当院での審美治療の種類についてはこちら。)

根管治療を行い、銀歯をセラミックに変えた症例

右上の4番目の歯(第一小臼歯)に違和感を感じて来院され、セラミックのかぶせものにされた方です。

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治療前のレントゲン写真です①
根の先の赤〇の部分に黒い影が見えます
その部分だけの写真を撮っても同じように根の先に影が見られます。

この歯は、10年以上前に根の治療をせずにかぶせものを入れたそうですが、その後神経の中が感染し、根の先に炎症を起こし膿の袋ができていたため、根管治療を行いました。

根の治療についてはこちらを参照してください。

根管治療後のレントゲン写真です。

根の治療が終われば、あとはかけている部分を作っていく処置になります。

治療の手順としては、まず土台の部分を作って歯の形を大まかに戻し、その後かぶせものを作るようになります。
この方はかぶせものにセラミックのかぶせものを選択されたため、土台の部分の処置からは自費治療となりました。
土台としては、自費のファイバーコアを使っています。当院では自費のファイバーコアシステムとしてi-TFCコアを用いています。

土台を立てて、かぶせを入れていけるように歯の形を整えます。
型取りをしたところです。歯と歯茎の境目がきれいに出ています。
かぶせが出来上がったら土台の歯に
かぶせものを入れます。

この歯の治療に関しては、大体週に1回来院していただいて、根の治療に3回、土台を作るのに2回、かぶせものを作るのに2回の計7回かかっています。
治療期間は2カ月弱でした。

  

     

  

  

 

  

余談ですが、実際患者さんに使っていただいていた仮歯です。
仮歯の境目が、技工士(歯を作る専門家)さんの書いた赤いラインときれいに一致しており、仮歯が模型にぴったりフィットしている=口の中の歯の状態と模型との間に誤差がなく、また仮歯の精度も高いことが分かります。