歯の移植

右下の歯の状態が悪く、抜歯せざるを得ない状態であったため、健全な左下の親知らずを同時に抜歯し、右下に移植した症例です。

歯の移植とは、失った自分の歯のスペースに他の場所に生えている自身の歯を持ってくる処置になります。多くの場合は親知らずを他の場所に移植することになります。

一般的な臓器の移植の場合では、他の人の組織を持ってくるため移植後も免疫抑制剤を飲み続ける必要があります。
しかし、歯の移植の場合、移植する歯は自分自身のもののため、基本的には免疫からの攻撃を受けることはなく、順調な経過をたどれば元々その場にあった歯のように噛むことができます。

また保険算定する場合、条件は限られますが、今回の移植処置の場合は、保険適応の処置となります。

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右下の5番目6番目の歯が保存できない状態でした。

あごの骨より下まで虫歯が進行し、根の先にも炎症を起こしています。

 
 
右下の5番目6番目の2本の歯に非常に大きな虫歯があり、虫歯を取り除くとあごの骨より下まで歯がなくなってしまうような状態で、また根の周りにもばい菌が入り込みあごの骨も溶かされてしまっていました。

 
 

反対側の親知らずです。

 
 
移植する歯の状態としては、歯の周りに歯石が沈着していたり、根が複数に分かれているようなレントゲンの像であったり、骨に埋まっている根の量が少なかったりと、条件はあまり良くはないですが、総合的に判断し、移植する方がメリットが大きかったため移植することとなりました。
 
 

右下の歯を抜きます。
反対側の親知らずを抜きます。

 
移植する場合、移植歯は生えている形のままきれいに抜けないといけません。
今回は問題なく抜歯ができ、歯の周りの歯根膜も出来るだけ損傷しないようにしています。

 

抜いた歯を移植し固定します。

 
移植する場所の環境を整えたのち、移植歯を挿入し、固定しています。
しかしこのままでは移植した歯の中の神経が腐ってきてしまうため、ある程度傷が落ち着いてきたら根管治療が必要です。

 

糸での固定を一度除去し、再度ワイヤーで固定しています。

 
 
根管治療を行うため、固定をワイヤーでの固定に交換しています。

  

根の治療後です。

 
 
根の治療をし、根の中に細菌が繁殖しにくいように薬を詰めています。

 

3カ月後、歯の周りに骨が少しできてきています。

 
 
その後ある程度回復を待ち、固定を除去します。
様子を見て問題がなければ、仮歯を入れ、噛み合わせの負担に耐えれるかどうか判断していきます。

経過良好であったため、手前の4番目の歯を使ってブリッジを製作しました。

 
 

8カ月後です。

 
 
動揺などもなく、周りの骨も回復してきています。


今回は歯の移植についての症例を提示させていただきました。
歯牙移植というものは、移植する歯が健全であり、根の形や歯の大きさが適切であることが必要であったり、条件は限られますし、治療の成功には移植する歯の歯根膜の状態が大きく影響を及ぼしますので、実際に移植を行い経過を見るまで、確実に成功するといえるような方法ではありません

しかしながら、治療が成功すれば、もともと生えている歯と歯周組織の状態はほとんど同じ状態になりますので、骨と直接結合しているインプラントよりも自然な噛み応えが得られます

歯の移植は、不要なご自身の器官の再利用という点を考慮すれば、失った歯を回復する手段としては一考の価値があると思います。
原歯科医院では、ご自身の歯を出来る限り残していくために様々な治療法を提案できるよう尽力しています。ご希望される場合は、ご相談ください。